桜が咲く頃~初戀~
そんな様子を隣の部屋の襖の隙間から見ていた紀子は嬉しくて胸が震えるのを抑えられず少し涙が零れた。香奈を信じて上げられなかった自分を同時に責めてもいた。香奈の態度を自分の気持ちに置き換えて決め付けていた自分が情けなく思うと何故香奈の気持ちになって物事を考え無かったか悔やまれた。


『彩未。好き嫌い言ったらあかんよ。ここには有るもん何でも作って食べるんやで近くにマクド何か無いねんよ。お姉ちゃんが作ったお味噌汁美味しいで』

香奈はそう言いながら大根を3人分だけ切り分けた。香奈は手際よく朝食を作る。

彩未に大根を刷らせると楽しそうに一生懸命卸金と戦っていた。

大根とネギ、おばぁちゃんが作る合わせ味噌のお味噌。目玉焼きに小アジの開き大根の漬物と納豆。そして彩未がすりおろした大根すりにポン酢を混ぜただけのもの。おばぁちゃん家の特製薬草茶それらを全て土間のテーブルに並べると彩未を見て言った。

『彩未。ネボスケお母さんを起こして来て』

彩未は紀子の眠ってる部屋の襖を開けた。紀子はまだ毛布にくるまりぐっすり眠っているようだった。


『お母さん。ご飯出来たでえ早く起きて!』


彩未の可愛らしい甘えた高い声がおばぁちゃん家に響いた。
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