桜が咲く頃~初戀~
『圭、子供出来た』

夜中に突然泣き出した綾香が言った。圭亮は何を言われたのか初めは全く分からなかった。

『本当に産むからね。責任取りなさいよ!』

強い口調ではあったけど綾香は何故か肩を震わせて泣いた。圭亮は何も考えずにただ頷くだけだった。

暫くは大学も普通に通ってはいた圭亮も子供が出来た以上大学は通えないし、働かなくてはいけない。

「俺の夢ってなんだ?」

そうため息をつきながらそんな気持ちを打ち消し、また考えては打ち消してを繰り返して逃げてしまいたいと思い、伊藤のおばぁちゃんのあの日の言葉が思い出され圭亮は情けない気持ちでいっぱいになるのだった。

『井の中の蛙大海を知らず…』

そう言葉に出して思った


「何時か、俺も空の高さに気が付き無限があると本当に思う日が来るのだろうか?」


為す術も全て奪われたかの気持ちが恐怖感を圭亮に与え、襲っては、気持ちを奮い立た。そして、父親になる決心をした。

その日に圭亮は大学に退学届けを出して来た。


大学を辞めた事は両親にも綾香にも言えない日々が1ヶ月続いたある日。


『圭、大学は?最近バイトばっかり行ってるよね?』


綾香がベランダに洗濯物を干しながら振り向きもせずに冷たい口調で圭亮に聞いて来た
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