桜が咲く頃～初戀～
屋上で、圭亮と雄一が話す言葉は端々しか聞こえて来なかったけれど。香奈は圭亮が時折見せていた寂しげな表情を思い出し東京で何かあったのかとは気になった

気にはなったけれど、ただ気にすれば気にする程香奈の胸の奥が狭くなるばかりで、その事を圭亮に話したり問いただしたりすると言う立場でも無いことは十分理解もしている。


何処か遠い記憶に存在する『綾香』と言う名前が、香奈の気持ちをザワつかせ不安になるのだ。

何となく違和感のある圭亮との距離が深い隙間を作りその雰囲気が堪らなく香奈を落ち着かせ無くさせそうだった。

圭亮も何かしらその空気を感じて黙り込んだ

その空気を打ち破って香奈の携帯電話が鳴った。

懐かしく鳴るソーシャルゲームの着信音に香奈はビクッとすると着ていた赤いハーフコートの左ポケットからスマホを出して画面を見た


圭亮はその着信音に


『香奈ちゃんパズドラするんや』

と言って笑った。

やっと先程の窮屈な空気が溶けた瞬間だった。

『うん、前はしてたけど今はやってへんよ』


そう言いながら香奈はスマホの画面を見た

紀子からだった。


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