言葉がなくても
「しってるよ。桜井君はここで働いてる子だよ。今は工場の中で仕事が始まってるからでてこれないけど。」


「そっか。これ今朝駅で落としてったからさ。
そいつさ、朝うちにぶつかっといて謝りの一言もないんだよ。おばちゃんからもきつく叱っといてよ。」


と、私は怒ったふりおしておばちゃんにカードを渡した。

おばちゃんは少し寂しそうな顔をして、「桜井君ね、声がでないのよ。小さい頃にうけたショックが大きくてそれから言葉を失っちゃったの。
耳は聞こえるんだけどね、なかなか人とも上手く接せないのかいつも一人殻に閉じこもっちゃってて。私のほうから謝るわ。本当にごめんなさいね。」
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