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その日の夜。


自由時間ということで、廊下には何人もの歩いてる生徒の姿が見える。

私と多美は、エレベーターの近くに隠れてた。



「わかった?涼。私が山口と見回るってことは、見回りを甘くすることも可能だってことだよ」



何を企んでるのかわからないけど、多美には何か考えがあるらしい。

だからって、こんなの私一人じゃ…



「でも一人でなんて無理だよ。昼間の女の子達も絶対いると思うし」


「十くんに会えると思えばできないことはないはずでしょ!がんばれ!ほら!」



そう言われて押し込まれたエレベーターは、チケットを握った私を一階へと運んでいった。



神様~っ



手を握り合わせて目を閉じる私の前に、大きなホテルの玄関ロビーが広がる。



もう、行くしかない。



私はビクビクした早足で、四枚張りの自動扉を抜け出して外へと飛び出した。





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