ファンレター
「自由行動の許可範囲から出てるぞ。しかも食い逃げとは……やってくれたなぁ、おまえら」
ホテルの絨毯が敷きつめられた廊下に、私と多美は正座する。
山口の顔には、思った通りだと言わんばかりの笑みが浮かんでた。
「涼は全然悪くなくて、私がぜーんぶ悪いの!」
「連帯責任!明日は二人ともオレと一緒に行動だ」
ホッ…
強制帰還じゃなくてよかった。
今日がなんとかなれば、とりあえず明日は仕方ない。
「加えて河野には、今夜のオレの見回りを手伝ってもらうからな!」
「ええっ!!」
私は思わず叫んでしまった。
だって、今夜多美を取られるのは、絶対困る!
「羽田には関係ないだろう。そんなに驚かなくても」
「で、でも。明日一日罰を受けるんだし…」
「わかりました!」
「えっ!多美…」
山口の要望を、多美はあっさりと引き受けた。
「困るよ多美~」
「いいからいいから。大丈夫!」
どうすればいいの?
私一人で行くなんて、絶対無理なんだから。