ファンレター




十が校舎横で濱田サキを引き止める。

「ずっと好きだったんだ。もしよかったら、オレとつきあってくれないかな」





なんだか、自分が言われてるみたいでドキドキした。

画面越しでも目が合うと緊張する。

父と母の様子も気になるけど、隣を向くことすらできない。





「ごめんなさい。今は誰ともつきあう気ないから」

頭を下げて去って行く濱田サキと、ぼう然と立ち尽くす十。




カメラアングルが二人から遠ざかって、あっという間だけど、ここで十の記念すべき出演場面が終わった。

告白を受けた濱田サキが、友達の男子二人にそのことを話すという感じで、物語は流れていくようだ。




ドラマの中のこととはいっても、フラれる十を見るのは心苦しいような……変な気分だった。



「うーん、ちょっと新聞の内容に真実味が沸くよなぁ」


「あなた!」


「別に私は気にしてないもん」





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