アルバイト執事にご用心
予想はしていたとはいえ、ゼイルの前でゼイルの声をきいてしまうとどうしたらいいのかわからなくなってしまう。

しかも、前に会ったときにはずっと好きだったと告白までされたのだから、心穏やかではない。

なんとか話をそらして出て行こうとしたが、すぐにゼイルはこういった。


「デートが楽しいかい?」


「・・・!・・・また、調べたの?」


「まぁ、保護者は情報は得ていないとね。」


「デートなんてものじゃないです。
見たいものがあるから、お友達と見に行っちゃだめというんですか?」


「いいや。だけど・・・俺とさほど年も変わらない輩に君の世話をさせてると思うと面白くはないな。」


「あの、ここにもどっても何もしないって約束してくれますか?」


「何もしないとは?」


「だから、保護者としてやるべきことはやっていただくのはけっこうなんですけど、あの、必要外のスキンシップとかえっと・・・私が好きとか・・・そういうのは。」


「怖いのかい?俺が。」


「・・・はい。」


「へぇ、しばらくぶりのうちに正直な気持ちは言えるようになったんだね。
前は何もいってくれなかった。」



「ここで我慢したって意味がないでしょ。
お父様ももういないし、私がわざわざいい子でいなきゃいけない理由もなくなったわ。」


「そうだね。
ここにいるのは自立した大人の女性になろうとしている娘だ。

自立しようとしているわりには俺ひとりの対処にも困っている有様だしな。」


「もうやめてください。
仕送りもしてくれなくていいですから、私のしたいようにさせて!
意地悪を言いながら私を追い詰めないで!お願いです。」



「すまない・・・こんなこというつもりはなかった。
ここへもどってくれれば、君の思うとおりにするよ。

俺は仕事が忙しいし、あまり顔もあわさないから気にしないでくれ。」
お金のことは今までどおりだし、追い詰めるつもりもない。
大学を普通に卒業してくれれば、俺の役目はもう終わりだ。」


ゼイルはそういうと、自分の部屋へともどっていってしまった。

クレアは涙が止まらなかった。


(どうしてこんなふうになっちゃったんだろう。
お父様がいて、執事をしてたゼイルはとても優しくて、私のいうこともたくさんきいてくれたのに。

好きを押し売りしたかと思ったら、もうどうでもいいみたい。
もう、あんなやつ知らない。

私は私だもの・・・。自立した大人の女性になってやる!)
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