記憶 ―黄昏の蝶―
「…レンみたいな素直な…人魚の男の子が良いなぁ、俺…。」
「あら。あたしは水嫌いの人魚なんだから、泳ぎを教えるのはリュウだからね?」
「俺?」
「そうよ?可愛い動物だった前世の昔の夢から、ずっと水に入るのは嫌いなの。知ってるでしょ?」
「ははは…。どんな移動でも、ビビは絶対に舟師を手配するもんなぁ…。泳げない人魚…」
「失礼ね。泳げないんじゃなくて、泳がないのよ?あたし。」
「はいはい」
「本当よ!?」
「はは…。レンにも教えなきゃな?俺みたいに速く泳げるようになりたいんだってさ…」
「あら、忙しいのね?」
意地悪なビビの笑い声。
でも、
それはいつでも優しくて、
聴いているだけで、
俺は幸せな気持ちになれる。
やっぱり、
俺は、行かなくちゃ。
君たちを守る為に。
「……もう行くよ。」
「え?」
体を俺に預けたままのビビが、
俺の胸の中で不安そうな声を上げた。