記憶 ―黄昏の蝶―


『…永遠は「金色の懐中時計」の中に…。されど前任が持ち去ってしまった…』

『…取り戻さねばならん…』


…ユピテルか?
星を渡ったというユピテルを追えばいいのか…?

…どうやって…?



『…運命を紡ぐ者よ…、魂を蝶に乗せ、世界を巡るがよい…』

『…そなたは今までに無い、様々な術を授かるだろう…』


そんな漠然な…!
詳しく言ってくれねぇか。

あれか?
七色に光る街ってやつか?


『…前任が持つ「永遠」の元へまでは、我等が導こう…』

『…運命を紡ぐ者よ…、世界の運命を正しき道へ導くのだ…』


声は、
そこまでで途切れた。

本当に肝心な事は、
何1つ教えられていない。



蝶に、魂を乗せる…

身動きの取れない身体。
その胸の中心に意識を集中して、強く…強く念じた。


――…!?

すると可笑しな事に、
俺は「俺の身体」から外に出られたではないか…。


不思議な光景だった。

目の前には、
氷漬けになった自分の身体。

白い協会の衣服に身を包んだ「それ」は、神に捧げた人柱そのものに見えた。


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