初めての恋に溺れる人魚~my first love~

「入るぞ」


「え……?あ……は、はい……」


よくわからないけど、言われるがままに中に入ってみる。

すると早速、


「いらっしゃいませ」


と、黒いスーツを着た綺麗なモデルさんみたいな女性が受付にいて、挨拶をしてくれた。


「ユリ、いる?」


そう月島先輩が尋ねると、受付の女性は、


「少々お待ちくださいませ」


と、受話器をとって、“ユリさん”という人を呼び出しているみたい……

こっそりと店内を見渡してみる私。

店内はとても広くて、細かい細工がされた掛け時計や置物があって、アンティーク……っていうんだよね?そんな雰囲気のオシャレな空間が広がってる。

待合わせをして、着いた場所が美容室。という事は―…


「先輩のお家って美容室なんですか……?」


純粋に出た結論で訊ねてみた私。

だけど、先輩は、


「はぁ?」


と、眉間に皺を寄せて怖い顔つきで私を見た。

月島先輩のお父さんは音楽関係のお仕事って言ってたけど、てっきり、ご家族の誰かが美容室をされていて、同じビルの上の階とかに住居が……なんて思ってしまったのに、今の反応だと違うみたい。



< 156 / 421 >

この作品をシェア

pagetop