記憶をなくしたピアニスト
「やっぱりラフマニマ
…ラフマニノフですよね?

ラフマニフフ
…違う!

ラフマニノフの協奏曲の3番なんて
弾けるんですか!!??」

「うん、まあ…。
でも、ほんと、
あなたこそ、ピアノだけでわかるなんて。凄いわ。」

「えっ?!……あ、いや、父が音楽に詳しいので、自然に覚えてるだけっていうか、そんな感じなんで」

お互い謙遜し、しばし沈黙。
やばい、何話そう。

「ねえ、あなた…名前教えてくれない?」
突然に沈黙は終わる。
「あ、えっとー、瀧花蒼です」

「蒼さんね。
ピアノ、あなたも弾けるんでしょう?
なんか弾いてよ!」


「――・・・え、俺なんかが弾いても良いんですか?」

「ぜひ、聞きたい。」
俺は、重々しい足を動かして、
ピアノの前に座った。
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