タヌキな騎士と選ばれし花嫁の・・・「愛は世界を救うんです!」
いまここでバレたら、非常にまずい。


王子も姫も、あたしを男爵夫人だと信じているから、今回の件を依頼したんだもん。


実は逃亡奴隷だなんてことがバレたら、全部ブチこわしになっちゃうよ!


「護衛兵は・・・兵士は・・・その、誰も連れていきません」


「・・・・・・? 連れていかない、とは?」


「えっとぉ・・・・・・」


あたしは怪訝そうな顔をしてる王子から、さり気なく視線をそらす。


内心ダラダラ冷や汗をかきながら、懸命に言い訳を探した。


「えっと、そう! 今回の件は極秘扱いなんですよね!?」


「そうだが?」


「なら事情を知る人間は、少ない方が絶対いいですから! 外部に漏れたりしたら大変!」


「しかしそれは、さすがに身分ある夫人が・・・」


「いーえ! あたしの身分なんかより、国の平安の方が大事です!」


「・・・・・・・・・・・・」


「平安平安! 平安ばんざい! ・・・ねっ!?」


あははーっと笑ってごまかし、王子を煙に巻いた。


王子はそんなあたしを、どうにもうさん臭そうに見ている。


うおぉ、そ、その視線が痛い!

そんな深く考えないでいいから! ここは軽めに流してお願い! ね!?


「・・・まぁ、兄上の護衛兵もいることだし、今回は別段、危険な旅でもないことだし」


「そうですよ! 滅亡した国なんかに、賊もいないだろうし!」


「ふむ。では男爵夫人の忠義心を、ありがたくお受けしよう」


「えーもー、受け取ってください! ドーンと!」


・・・・・・ホッ。

良かった。なんとか切り抜けたみたい。

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