恋文



「俺は松本悠哉、23歳。」

「えっと、川上小春。高校2年生。」

わざわざ年齢まで言った悠哉さんに見習って、同じように挨拶をする。

「小春かぁ。じゃあハルちゃんだね!」

まじ可愛い。
なにこの人、天使?

「悠哉さんは何してたんですか?」

アタシに質問に、悠哉さんの太陽みたいな笑顔は、みるみるうちに雲っていった。
最後にはシュン、と怒られた子犬みたいな表情になっていて、聞いちゃいけないこと聞いたのかな、と不安になった。

「聞いちゃダメでした?」

「ううん、ダメじゃないよ。…実はね、落とし物をして困ってたんだ。スゴく大事な物だったからヘコんでた所。」

あぁ。落とし物。
アタシはてっきりリストラでもされたのかと。

「何を落としたんですか?」

「大事な手紙。」

手紙?
あれれれ?アタシそんなん見た気がするぞ?
あ、そうだ。
そもそも、その手紙を置く為にベンチまできたんだった。

もしかして、

「その手紙って茶色封筒の?」

「え?うん、そうだけど。」

はっはー!やっぱり!!
何で知ってるんだろう?といった表情をしている悠哉さん。
アタシが拾ったとは考えもしないんだ。

「悠哉さんの手紙ってコレですか?」

ポッケに突っ込んだ手紙を引きづり出すと、悠哉さんの表情は、パアッ、と輝いた。
本当、分かりやすい人だなぁ。

「それそれそれ!ありがとう、ハルちゃん!」

盗まれた、とか思われなくて良かったー、と安堵しつつ、なんだかアタシまで嬉しくなる。

「いえ、たまたま拾っただけなんで。」

「そうだ!何かお礼しよっか?何かある?」

「えぇ。特に、ないですけど。」

「うーん、じゃあ、パフェでも奢るよ!ね?どうかな?」

是が非でもこの炎天直下から逃げ出したいアタシには、断る理由もない。

それに、この笑顔に〝No〟と答えられる人なんているのだろうか。

「良いですよ。奢ってください。」

「うんっ!」

いやはや、なんとも素敵な笑顔。
鼻血でそう。

< 3 / 48 >

この作品をシェア

pagetop