ガーデンテラス703号
「今日は付き合ってくれてありがとう。また連絡するよ」
優しい目で私を見つめながらそう言うと、森岡さんが車に戻る。
その姿を茫然と見送っていると、助手席側の窓が開いた。
「おやすみ」
車のエンジン音に混ざって聞こえてきた声が、鼓膜を震わせる。
胸が騒ぐような、何だか落ち着かない気持ちで頷くと、森岡さんは片手を挙げて、車を発進させた。
白のセダンのバックライトが、交差点を曲がって消えるまで見送ってから、複雑な想いを吐き出すようにため息をつく。
森岡さんは、香織が言っていたように、私に好意を持ってくれてると捉えていいんだろうか。
一緒に食事をしているときや、車の中で彼に言われた些細な言葉。
そして、別れ際に落とされたキスのことを考えると、興味は持たれてるのかな……とは思う。
森岡さんがくれた言葉やキスは、嫌ではなかったし、ほんの少しときめいたりもした。
だけど、大人で優しそうな森岡さんは普通にモテそうだし、どうして私……
遥斗と別れて以来、恋愛ごとからは遠ざかってたけど。
これは、新しい恋になる……?