ガーデンテラス703号


「どうする?ゆったり座りたかったら、テーブル席が空くのを待ってもいいけど」

「私はどちらでも。森岡さんにお任せします」

「わかった。じゃぁ、カウンターでお願いします」

森岡さんが伝えると、男性店員さんがにこりと笑って私たちを誘導するように歩き始めた。

店員について先に歩く森岡さんの背中を追いかけるように、私もあとをついていく。


「こちらにどうぞ」

「ありがとう」

店員さんが案内してくれたのは、カウンターの端の席だった。

その向こうにはまだ奥へと続く廊下があって、途中で厨房とお手洗いに続く道が分かれている。


「どうぞ、あゆかちゃん」

店の中を眺め回していると、森岡さんが私のために椅子をひいてくれた。


「あ、ありがとうございます」

こんなふうに男の人に親切にエスコートしてもらったことがあまりなくて、ドギマギしてしまう。

肩にかけていたショルダーバッグをおろして前に抱きかかえると、彼に促されるままに椅子に座った。


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