ガーデンテラス703号


「私も、森岡さんと同じものを少しいただいていいですか?」

迷った末にそう言うと、森岡さんがにこりと笑った。


「いいよ。じゃぁ、これボトルで」

「かしこまりました」

森岡さんの注文を受けたバーテンダーが、軽く会釈して私たちの前を一度離れる。

それからワイングラスをふたつ持ってくると、それぞれに注いでくれた。

ふたりで乾杯をしてから、ワインをひとくち口に含む。

高いワインなのか、普段シホが家で飲んでいるものよりも断然美味しい。

だけど、アルコール度数も強いのか、グラスをテーブルに置くときに、頭の中をぐらりと何かが巡っていくような感覚がした。


「何食べる?嫌いなものはない?」

「なんでも食べれます」

ワイングラスの縁を指先で拭っていたら、森岡さんが食べ物のメニューを見せてきた。

ふたりで少し顔を寄せてメニューを覗き込んでいると、さっきのバーテンダーが注文を聞きにきてくれる。


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