ガーデンテラス703号


メニューを決めきれずにいた私たちがバーテンダーを待たせていると、別の男性店員が彼のところに近づいてきた。


「悪い。ここ変わるから、向こうのお客様のドリンク頼めるか?」

「わかりました、店長」

そんなやりとりが聞こえてきて、メニューから顔を上げる。

このお店の店長って、どんな人なんだろう。


「すみません。ご注文の途中ですが、替わらせていただきます」

一礼するように頭を軽く下げていた店長が顔を上げた瞬間、私の目は彼に釘付けになってしまった。

驚きのあまりに、息をすることすら忘れてしまう。

目の前に立っていた店長が、ホタルだったから。

驚いたのはホタルも同じだったみたいで、私を見つめるその目がほんの少し見開かれる。


「あゆかちゃん?」

店長と客にしては不自然なくらい互いに見合う私たちを見て、森岡さんが不思議そうに首をかしげた。



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