ガーデンテラス703号


「では、こちらのカクテルとグラスワインで」

ホタルは森岡さんのほうを見て確認をとると、私たちから離れていった。


「店長から何か勧めてくるなんて珍しいな。あゆかちゃんが頼んだやつ、よっぽどの美味しいのかな」

ホタルが離れていくと、森岡さんがドリンクメニューをつかんで眺めながら笑った。


「美味しかったら、俺も次頼もうかな」

森岡さんが独り言みたいにつぶやいたとき、私からは遠い場所に置かれていた彼のスマホが鳴った。

着信相手を確認した森岡さんが、スマホをつかんで立ち上がる。


「ごめん、ちょっとだけ外すね。すぐ戻るから」

仕事の電話かな。休みの日まで大変だ。

森岡さんは私から離れてお手洗いがある廊下の方まで歩いていくと、そこでようやく通話ボタンを押してスマホを耳に押し当てた。

つかの間ひとりになった安心感からか、ワインの酔いが一気にどっと押し寄せてくる。



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