ガーデンテラス703号


「そもそも、鍵忘れてきたホタルが悪いんじゃない。1日くらい野宿でもするか、職場の誰かの家にでも泊めてもらえば?」

嫌味たっぷりにそう言うと、少し間を空けてホタルの声が返ってきた。


「じゃあ聞くけど。お前は今一緒にいる男と、今夜どうにかなりてぇの?」

「え……?」

私が言葉を詰まらせると、ホタルが電話越しにクスリと笑った。


「今すぐそいつと別れて帰れよ。俺が帰るまで、家でおとなしく待ってろ」

さっきまでとは違う、ホタルの優しい声に、スマホにくっつけた耳がこそばゆくなる。


「それ、どういう……」
「じゃぁな」

ドキドキしながら聞き返そうとしたら、ほとんど一方的に電話が切れた。

おとなしく待ってろ、って。

どういう意味……?

電話が切れたあとも、ホタルの言葉の意味を考えたらドキドキが止まらなかった。

スマホを握りしめたまま、放心状態で立ち尽くしていると、後ろから肩をたたかれる。


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