ガーデンテラス703号



隣に座ったホタルとの距離は、離れているようで、意外に近い。

手を伸ばせば、余裕で互いに触れられるくらいの距離だ。

絶妙な距離感が、私を必要以上に緊張させる。

おかげで、置かれたマグカップに伸ばした手が不自然に震えた。


「い、いただきます」

さらにどもってしまった私の隣で、ホタルがクッと小さく笑う。

不自然な態度をバカにされたような気がして、少し恥ずかしかった。

恥ずかしさをごまかすために、両手でマグカップを包むように持って、ちょっとずつ紅茶を啜る。

ホタルが淹れてくれたお茶はカモミールのハーブティーで、その優しい香りが少しずつ私の羞恥心と緊張をほぐしてくれた。


「カモミールティーって、安眠効果があるんだっけ?」

「みたいだな」

緊張がだいぶほぐれた頃に、独り言みたいに訊ねると、ホタルが頷いた。


「お店でも、いろいろお茶を出してるの?」

「そんなに豊富ではないけどな。一応、親父の会社が輸入食品扱ってるから、そのツテで試させてもらったりとか」

「そう、なんだ」


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