ガーデンテラス703号

At the BAR



月曜日の朝の7時。

部屋のドアに張り付いて、リビングから聞こえる物音がないか聞き耳をたてる。

向こう側から何の物音も聞こえないことを十分に確かめてから、まずドアを数センチだけ開いてその隙間から用心深くリビングの様子をうかがった。

息を潜めてしばらくじっと様子を見ていたけれど、やっぱり誰もいない。

ほっと息をついてドアを押し開けると、家の住人の誰にも気付かれないように忍び足で洗面所に行って顔を洗い、身支度を整えた。

着替えとメイク済ませ、髪型を整えると、通勤用のカバンを胸に抱えて、また忍び足で廊下を歩いて玄関へと向かう。

玄関に一番近いホタルの部屋を緊張気味に通過して、パンプスを履いて静かに家を出る。

後手にドアを閉めると、マンションの通路を足早に歩いて、エレベーターに乗り込む。

エントランスを出て、後ろでそのドアが閉まる音を聞きながら、私はようやく安堵のため息をついた。


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