ガーデンテラス703号


「ホタル、私もう本当に……」

「うん、起きるんだよな」

意地悪くそう言うホタルは、彼が辞めない限り私が彼から離れられないことにきっと気付いているはずだ。

それなのに、私の胸を弄びながら甘いキスを何度も落として微笑む。

その顔は、とても意地悪だった。


「ホ、タル……」

「ホタルー!起きてる?」

もう目覚めてから何度も口にしているその名前を、甘い吐息とともにつぶやいたとき、ドアの向こうから突然シホの声が聞こえてきた。


そうだ。

すっかり頭から抜けていたけど、この家には私たちふたり以外にシホも住んでる。


「ホタルっ」

たくし上げられたままのキャミソールを慌てて元に戻して、ホタルの下で肘をつきながら少し上体を起こす。

まさか部屋の中にまで入ってこないだろうと、体裁を整えようとしていたら、予想外にもノックなしにドアが開いた。



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