ガーデンテラス703号


その瞬間そばで吹き出すような笑い声がして、どこか懐かしい低い声に名前を呼ばれた。


「驚きすぎ。あゆかじゃん、こんなとこで何してんの?」

振り返ると、そこにはネクタイを軽く緩めたスーツ姿の男が立っていた。


「ひさしぶり」

少しだけ首を右に傾けて笑うその仕草には、嫌になるくらい見覚えがある。


「遥斗……」

私が小さくつぶやいたのは、3年ぶりに呼ぶ元カレの名前だった。

別れてからは偶然に会うことすらなかった元カレの遥斗。

そんな彼と、まさか今頃こんなところで再会するなんて……

就職してすぐの頃に別れたから、私にはスーツに着られてるみたいなまだ学生らしい幼さの残る遥斗の印象しかない。

だけど今目の前に立つ彼はしっかりとスーツを着こなしていて、学生時代明るく染めていた髪は短すぎないけれどルーズすぎない長さに整えられた黒髪になっていて。

3年前とは違う、「大人の男の人」らしい雰囲気を醸し出していた。


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