これが、あたしの彼氏です。- 2 -
「…………」
あたしがゆっくりと顔を上げると、当然のように目の前の矢沢君と視線が重なる。
「…っ」
あたしはそれにドキリとして、つい息をゴクンと呑み込んでしまった。
「……え、えっと、さっきはありがとう。……じゃあ、あたし帰るね…」
「…………」
避けたいわけではないのに、本心とは真逆の行動を取ってしまう自分に物凄く嫌気が差す。
そんなあたしの言葉を聞いていた矢沢君が、不意に不満そうな顔をして眉間にギュッと皺を寄せた。
あたしはそんな矢沢君の表情を見ていない振りをして、この場を静かに去ろうとすると、
「待て」
不意に大きな掌が、あたしの腕をガシっと掴んだ。
「な、何……?」
戸惑うあたしに、真剣な眼差しを此方に向けて来る矢沢君。
「………、話がある」
「…………」
「ついて来い」
「…え、ちょ…っ、矢沢く――っ」
短くそれだけ吐き捨てた矢沢君はあたしの腕をグッと掴んだまま、一方的にズカズカと足を進めた。