音色
改札を出ると、奏が立っているのがすぐに分かった。


「………‼︎」


あたしは、その姿を見て息を飲んだ。
だって、奏があまりにも綺麗だったから。
傘を差して立っているだけなのに凛とした雰囲気が漂っていて、しとしと降る雨がそんな奏を余計にキラキラ輝かせていた。
奏を初めて見た時と同じ感覚だ。

「琴音?何突っ立ってるの?濡れちゃうよ」

あたしを見つけた奏は、そう言って歩み寄り傘を傾けてくれた。

「ありがとう」

「行こう、琴音」

奏はあたしの手を取ると指を絡めた。
とくんと胸が鳴る。

「俺、こういう雨好き」

「なんで?」

「花に滴る水滴が綺麗だし、目に映る風景がしっとりして見えるから」

「何か奏って芸術家みたいだね!そんな風に雨の日の景色を見たことなかったよ」

「芸術家…か」

ぽつりと呟いたあと、奏はにこっと笑ってくれた。
だけど、何だか哀しそうに見えた。
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