音色
『この、和風ユニットは三味線、尺八、箏からなる三人組なんです。ボーカル&三味線を担当する華巻うららさんは…』


あたしは、野菜ジュースをコップについでキッチンでごくっと飲んだ。
奏がいなくなってから、毎朝野菜ジュースばかりになった。
忙しい朝でも、奏と向かい合ってただのトーストを食べるだけなのにおいしかった。
ひとりになった今は、何を食べたって変わらない。

「あ…っ‼︎」

あたしは持っていたコップを落としてしまった。

『続いて箏を担当している蒼井奏さんでーす!ユニットではイケメン担当、作詞作曲もなさるんですねー』

テレビの中に、奏がいた。
奏は十六夜というユニットを組んでいて、あたしが彼女だと思っていたのはそのユニットでボーカルと三味線を担当している女の子だった。

『では生演奏、お願いしまーす』

スタンバイした奏たちが、まずはボーカルなしの曲を演奏し始めた。
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