音色
残業もそこそこにしてあたしは急いで家に帰った。
部屋に明かりがついているのが見えると、なんだかホッとした。

「ただいま」

そう言ってドアを締めると

「おかえり、琴音」

と、奏が出迎えてくれた。

「ありがとう、琴音」

「は?」

「オムライス!おいしかった」

あたしは、冷蔵庫にオムライスを作って入れておいたのだ。
奏が無一文だったとしたらお腹を空かせてしまうんじゃないかと思ったからだ。
だけどわざわざ言うことでもないから、気付いたら食べてくれればいいやと思っていた。

「あ、全然。あんまり料理うまくなくてごめんね」

「ううん。すごーくおいしかった」

(よかった!)

奏の笑顔を見てあたしはそう思った。

「ね、琴音。着替えたら散歩行こう」

「散歩?」

「俺、いつも夜に散歩するのが多いんだ。…夏場は夜明け前に散歩するときもあるけど。最近散歩できてなかったし、この辺のことも知りたいし」

「わかりました!すぐ着替えますね」

あたしはそう答えて急いで着替えた。
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