音色
奏の少し後ろをついて歩いた。
部屋にいるとなかなか並ぶことなんてないから気づかなかったけど、奏は意外と背が高くてすらっとしていた。


「ね!琴音。お腹空かない?」

「あ…言われてみれば空いたかも、です」

「てゆーかさ、敬語やめようよ!…たぶん俺の方が年上だとは思うけどさ」

「…わかった」

「何食べる?俺、おごるよ!」

奏はそう言った。
あたしが選んだのは、近くのラーメン屋さんだった。

「おごるって言ってるんだからさぁ〜、お寿司とかイタリアンとかそう言うのでもよかったのに」

「だって、最近帰り遅かったし夜中のラーメンはヤバイと思って我慢してたんだもん!」

そう言ってあたしはラーメンをすすった。
久しぶりに食べたラーメンは格別においしく感じた。

「おいしいね、奏!」

あたしがそう言うと、奏はあの時みたいに優しい瞳であたしに笑いかけてくれた。
また、あたしの胸がどきんと音を立てた。
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