クラッシュ・ラブ

「なんだよ、急に! 相変わらずの呼び方しやがっ……ミキちゃん?!」
「あー……お久しぶり……です」
「久しぶりだね! 最後、来れなかったから」


そうだ。カズくんやヨシさんには、『家での用事があって』とメグに伝えてもらってたんだけど……。
イイ人のカズくんにウソをついたことが、ちょっと良心を痛めてた。

その気持ちが現れてしまって、カズくんの目を真っ直ぐ見られないでいると、向こうから優しい声で話しかけられる。


「……あのね。おれ、大体知ってるよ」
「――!」
「あー。ごめんね? でも恵から聞く前に、ユキセンセから聞いてて」


ああ、そうだったんだ。
雪生も、信頼してるカズくんだから、きちんと話をしたのかな。

カズくんに対する罪悪感が薄れると、俯いていた顔を少しずつ上げて、初めてまともに目を合わせた。
にこっと笑いかけてくれるカズくんに、わたしも笑顔で返事する。


「だけど、ミキちゃんの手料理と恵のとでは雲泥の差――いてっ!」
「ちょーっとぉー……どーいう意味よー」


メグがカズくんの耳を引っ張ると、「痛い痛い」と騒ぐ。そんな幼なじみの二人が、微笑ましく見えるのはわたしだけかな?

並んでる二人を見て目を細めていると、メグが本題を思い出す。


「そーだ! こんなバカみたいなことするために呼んだんじゃないのよ!」
「じゃあ離せよ、手! イテッ」


勢いよく耳から手を離すと、メグが真剣な顔でカズくんに向き合った。


「ちょっと、聞きたいことがあるの」
「はぁ? なんだよいまさら」
「『アキ』って人」
「『アキ』?」


メグの口から『アキ』と聞いてもピンとこないらしいカズくんは、浅く眉根に皺を寄せて聞き返す。
けれど、横目でわたしを見た瞬間に、その名前の主を思い出したようで。

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