クラッシュ・ラブ

「ご、ごめんなさい。インターホンで、『澤井』って言われたから……つい」
「はぁ?! 外崎、どーいうことだよ?!」
「そのあとにちゃんと言ったぜ? 『澤井――――さんから住所聞いてきた、外崎です』って」
「それ、美希がドア開けたあとに独り言みたいに言っただけだろ」
「まー……どうだったかなぁ?」


……なんか。なんか、この二人、見慣れてきたらちょっと……面白いかも。
なにより、雪生の新境地を見せられてるようで。そんなこと、本人には決して言えないけど。


「いまさら、わざわざ何の用で来た?」


グッとわたしを抱きしめる手に力を入れた雪生が問う。

わたしもそれは気になるな……。
どうしてわざわざここへやってきたのか。

すると、わたしたちの視線を受けた外崎さんは、長い足で回転椅子を跨ぎ、逆向きに腰を掛けた。


「……だって、考えてもみたら? 俺だけ個人情報晒されたわけだし? 今度は俺が知ってもいいかなーって」
「はぁ?」


ここ一番の、盛大な雪生の「はぁ?」。
でも確かにその声には、わたしもちょっと頷ける。


「わぁ。あんたらおんなじ表情してる。すげー」


くるっと反回転しては戻して、と、椅子を遊ばせながら外崎さんが言う。
わたしは反射的になんだか恥ずかしくなって、パッと両手で頬を挟んだ。

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