クラッシュ・ラブ

なにが、そんなに重い気持ちにさせてるんだろう。仕事のなんかなのかな? やっぱり。


「おれなら喜んで参加したいッスけどねぇ」
「カズはね。でも、ユキ先生はそういうのは得意じゃないでしょ」


ババロアを食べながら、大人の男3人がソファに座って話をしてるっていう光景もなんだか新鮮……。
なんて、関係ないことを考えちゃっていると、また、センセがぼそりと口にする。


「澤井さんが、『出ろ』って言うから」


『澤井さん』……どっかで聞いた気が……。ああ! あのときだ!
一人頭を傾げて、記憶を手繰り寄せると、すぐにその記憶に辿り着いた。

前に、ユキセンセと取材に出たときに聞いた名前だ。
わたしが、教会を目の前にして、「素敵」って言ったら、「澤井さんの言ったとおりだ」みたいなこと言ってたような。

澤井さんて一体……?


「まー、たまにはいいんじゃないスか? 最近、センセ、あんまり出掛けてないでしょ」
「んー。でも、問題は寝坊しそうなトコか」
「あー。確かに! ユキセンセ、原稿入る前って、かなり寝起き悪いですもんねぇ」
「寝太郎だからなー。電話の着信音程度じゃ、起きないことがほとんどだしなぁ」


カズくんとヨシさんが、「んー」と唸るように考える。

へぇ……。センセって、そんなに寝たら起きないタイプなんだ。でも、言われたらそんな感じもするし、違和感はないかな。

黙々とスプーンを口に運ぶユキセンセをこっそり見ていると、パッと他二人の視線が同時にわたしに向けられた。

な、なに? もしかして、わたしが見てたこと気付いて――。


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