クラッシュ・ラブ
「顔、赤くない? 大丈夫?」
さらに距離を縮めて、わたしを追い詰める。
頭に置かれていた彼の手が、わたしの額にあてられると、全身が石のように固まってしまう。
「だっ大丈夫ですっ……」
だから、ちょっと離れてくださいっ。
全身が熱いんだから、顔だって赤くなってて当然だ。このままだと汗も噴き出してしまいそう。
そんな姿、至近距離で見られたくない!
もう限界、とばかりに、目をぎゅ、と瞑る。すると、センセはわたしの限界を悟ったのかわからないけど、手を離して顔を覗きこむのも止めてくれた。
目を閉じてても、その気配がわかったわたしは、小さく息を吐いて目をゆっくりと開いた。
「そうだ。お給料って、手渡しでもいい? それと、立て替えて買い物してくれてたぶん、ちゃんと請求してね。オレ、そういうのうっかりしちゃうから」
「あ、はい」
「あー、行きたくないな」
ソファに、ぼすっと腰を下ろしながらセンセがぼやく。
「そんなに、なんか、いや……なんですか?」
和室に立ったまま、わたしが聞いてみると、ちらりとこっちを横目で見たセンセがダルそうに言う。
「……確か、ミキちゃんには前にも言ったけど。あんまり人が多いとこって乗り気にならないから」
「あ……」
そうだった。『他人と接するのが苦手』みたいなことを聞いてたんだ。
なら、なおさらそんな華やかな場所、行きたくもないかぁ。
空を見つめ、納得していると、ぽつりぽつりとユキセンセの“独り言”みたいな声が聞こえてきた。