㈱恋人屋 ONCE!
「じゃあ…私は…。」
「大丈夫です。あの時はたまたまそうだっただけで、それより前は逆の立場だったりすることもあったんじゃないですか?だから、これも些細なケンカの一つにすぎないと思います…って、何言ってるんでしょうかね、私…。話の当事者でも何でもないのに…。」
突然、私の体に何かが乗る。
「…ありがとうございます、紗姫さん。」
晴明さんだった。
「兄さん…。」
「紗姫さんの言う通り、だと思います。あれも、とある兄弟ゲンカにすぎないんですよね。…大切なことに気づかせてくれて、ありがとうございます。」
「…。」
晴明さんの服に隠れて顔が見えないのをいいことに、私は涙を流した。他人のことで、私には関係のないことのはずなのに。
お人よしな性格っていうのは、人を泣き虫にさせる。
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