ベランダ越しの片想い
*
だから、ただアキのそばにいた。
わたしにとって大切で、彼には必要ないことはなにも伝えなかった。
なのに、ああ、どうして。
────わたし、君にだけは知られたくなかったのに。
わたしの身勝手さも、気持ちも。
なにも知らずに、ただいつかその傷が癒えてくれたらいいと。
それだけを、願っていた。
だけど、本当はそんなの嘘。
「どうして、だなんて決まっているじゃない。
それとも、なに? わざとなの?」
「さき、」
「アキのことが好きだからよ……っ!」
思わず、といった風に手を伸ばしたアキから後ずさる。