ベランダ越しの片想い








だから、ただアキのそばにいた。

わたしにとって大切で、彼には必要ないことはなにも伝えなかった。



なのに、ああ、どうして。









────わたし、君にだけは知られたくなかったのに。









わたしの身勝手さも、気持ちも。

なにも知らずに、ただいつかその傷が癒えてくれたらいいと。

それだけを、願っていた。





だけど、本当はそんなの嘘。





「どうして、だなんて決まっているじゃない。
それとも、なに? わざとなの?」

「さき、」

「アキのことが好きだからよ……っ!」



思わず、といった風に手を伸ばしたアキから後ずさる。






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