キスキすき

夢のつづき






学校では、洸紀とは別のクラスで階も違う




途中まで一緒に階段を上がって、洸紀はあたしの階よりもう一つ上の階



朝からずっと一緒にいた洸紀がやっと居なくなって



ひとりで歩く廊下





あたしは





重症だと思う








教室に入ると、真っ先に向かうのは自分の席ではなく



友達の席



「おはようルリ子ちゃん」


「麻美だ!おはよー」



高2になってから一緒のクラスの橋本瑠璃子




最初の席順で隣になったあたし達は、そのまま自然と仲良くなった



ルリ子ちゃんは名前もだけど、容姿も性格もそれ相応に可愛くて



あたしもこんな子だったら、洸紀に女の子として見てもらえたかも…



なんて思ったりもした




ルリ子ちゃんにはまだ言ってない



あたしが洸紀を好きだということは




というか



この気持ちはきっとこれからも誰にも


本人にも、言うことはない









「今日から体育、長距離だよー」



ルリ子ちゃんが、机に突っ伏したままため息混じりに言う


それを聞いてあたしも、まだ始まっていない長距離走の疲れが前払いでやってくる



昨日、時間割を確認していたときはあまり考えないようにしてたけど



あたしは、運動が苦手だ




「ルリ子ちゃん、一緒に走ろうね?」


「うん!だけど、おいてかないでね?」


おいていくなんて、そんなことありえない

ルリ子ちゃんは、女子の中でも運動はできる方だ



部活だってテニス部で、キャプテン候補だし



本当なら、おいていかれるのはあたしの方




だけど、そんなこと言ってあたしと同じ位置に立ってくれる



そういうところが優しい




「ルリ子ちゃんについて行くから」


あたしがそう言ったとき、先生が教室に入ってきて、



あたしは小さくルリ子ちゃんに手を振って、自分の席に戻った



考えないようにしていても、やっぱり憂鬱だった長距離走



でもルリ子ちゃんと一緒に走るなら、少し楽しく思えるのはどうしてだろう



そしてもう一つ



少し楽しみなことがある







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