そのとき僕は
その大きな瞳にはぽかんとした表情の僕がうつっている。
それにハッとした。慌てて顔をそらして、ただうんと頷く。何だよ、僕。格好悪い。顔がカッと熱くなったのが判った。
それを彼女に知られたくなくて下を向いたままで頑固に服の土を払う。後ろから、彼女の声が降って来た。
「助けてくれたんだねー、驚いたけど、ありがとう」
手を止めた。・・・お礼を言われるとは、実際のところ思ってなかったのだ。だって、僕には先輩の言葉の呪いがかかっていたからだった。
桜の木の下に埋まってる仏さんが―――――――――――
ゆっくりと振り返る。ちゃんと立つと、彼女は僕と同じくらい背があった。女性では高い方ではないだろうか。頭の隅でそんなどうでもいいことを思いながら、僕はバカみたいに素直に言葉を出してしまっていた。
「君、幽霊じゃ、ない、よね?」
彼女の目が丸くなった。
「は?」
それは余りにも素直な、突拍子もないことを聞いて驚いたって人間の反応だった。
僕はまた顔を背ける。・・・・うわ、恥かしいー。何聞いてるんだ、本人に向かって!自分でもちょっとやばいだろうと思った。
ぶるぶると頭を振りたいのを我慢して、唇をかみ締める。それからようやく、もう一度彼女に向き直った。
「・・・ええと、すみません」