そのとき僕は


 すると国文科の先輩がお茶を飲みながら断定した。

「じゃ、幽霊だな」

「え、え?」

「美少女か~、いいなあ。眠る美少女、桜の花びらに埋もれる・・・絵になるじゃあないかっ!」

 僕が挙動不審になっていると、二人は勝手に盛り上がっている。ゆ、幽霊!?え、だってだって、目の前で立っていたけれど、あの人ちゃんと体の厚みもあったし・・・って幽霊が薄っぺらいとは限らないか。

 せいぜい面白い出会いだな、とか、お前変なことしてないだろうな?的なからかいを受けると思って話したのに、まさかの方向へ話が流れていくから僕はちょっと混乱してしまった。

「お前携帯でその子の写真とか撮った?」

「うお!見たいぞ俺も!」

 僕は先輩達に嫌そうな顔をむけてキッパリと言う。

「撮ってませんよ!盗撮は犯罪でしょ」

「じゃあやっぱり幽霊だろ。撮ってたとしてもきっと写ってないパターンだぜ」

「そうだよな。幽霊か、さもなきゃキチガイ」

「はっ!?ど、どうしてそんな極端なんですか!」

 休憩中とはいえ店の中なのに思わず叫んでしまった僕の頭を手刀でコーンと叩いて黙らせ、先輩はニヤニヤ笑う。

「だっておかしいだろうが。春といってもまだ寒いぜ~。何だってそんなところで寝るんだよ。そりゃあそこの下に埋まってる仏さんが、お前に掘り出して欲しくて幽霊になって出てきたと考えるのが筋が通ってるだろうが」

 もう一人がうんうんと頷いている。




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