戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
第二章 呪われの魔槍

乙女

甲冑からドレスに着替え、玉座に座る。

…玉座の眼下には、一人の女性が恭しく片膝をついていた。

長い黒髪、絹の衣。

顔を上げると。

「……」

化粧気はないものの、それを気にさせないほどの美貌が隠れていた。

妖艶という言葉が似合いそうなほどの美しさだ。

年の頃、紅とほぼ同じ二十代前半。

大人の女としての色香が漂う女性だった。

「遅くなってすまない。して、私に用とは一体何だ?」

女王との謁見というと、大抵の者は緊張するものだ。

その緊張を和らげてやろうと、つとめて柔和な表情を作って語りかける。

その私の表情に。

「はい」

女性は微笑で応えた。

…その笑顔に、嘲笑うような色を感じたのは私の気のせいか。

「私のような者に謁見を許してくださり感謝しております、女王。私は女神国より遥か北に位置する、とある国にて武器商を営んでいる者です」

この時代、武器商は儲かる商売だ。

何せこの地のあちこちで戦は続いているのだ。

武器や鎧は幾らあっても足りないくらいだったし、少々高値でも買い手がついた。

にもかかわらず、その武器商の女性の謁見の理由というのは。

「どうか女王陛下に、何とか引き取って頂きたい品があるのです」






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