戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
最終章 騎士の生き様

乙女

「放せ!放さぬか!」

女神兵達の手を振りほどこうと私は暴れる。

…紅が森の中に残されていると知って、既に一刻は過ぎていた。

私は紅を助ける為に単身森に戻ると宣言し、兵士達に止められている所だった。

「なりません乙女!森の中にはまだ黒の旅団の兵士どもが潜んでいるのです!」

「馬鹿者!だからこそ助けに行くのではないか!如何に紅が強かろうとあの森の中では…」

私が言いかけた時だった。

突然、森の中から誰かが吹き飛ばされるようにして出てきた。

その者は、地面を二度三度と弾むようにして転がり、最後に強く地面に叩きつけられて横たわる。

その者が赤い外套を身につけている事に気づき。

「紅!!」

私は強引に兵を振りほどいて駆け出した。

「紅!しっかりしろ、紅!!」

彼の体を抱き起こす。

…紅の胸には、大きな斬り傷が刻まれていた。

かなりの傷だ。

傷口からは大量の出血があった。

「衛生兵!すぐに紅の傷の手当てを!!」

私の声で、女神軍の中から衛生兵が駆け寄ってきた。

…信じられぬ。

紅ほどの騎士がここまでの手傷を負わされるとは。

そんな事を考えていると。

「誰がそいつの手当てをしていいと言った」


森の中からそんな声が聞こえた。



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