JUICY KISS ~あなたの唇独り占め~【番外編追加】
「おはようございます」
挨拶をしてデスクに向かう。
幸せ気分満開の私を待っていたのは現実だった。
裕美子とのこと、解決したわけではなかった。
話し合いも途中で逃げ出した事実を思い出し、席につく。
「相沢先輩、おはようございます」
「あ、おはよう、裕美子。その資料、チェックだけお願いね」
早口で話す私は誰が見ても違和感ありありで。
「相沢先輩、昨日はすいませんでした」
目を見ることができなかった。
目も合わせずに、こちらこそごめんねと言うしかできなかった。
淡々と仕事をこなし、11時45分に会社を出る。
向かう先は、壮志さんが見つけてくれた素敵なお店。
米蔵を改造したイタリアンレストランは、個室があり、会社の人も来ることがない。
「俺も初めて入ったけど、落ち着くな」
「日本人だなって思うね。この感じ、すごく落ち着く」
「お前のそういう感性、いいな」
ちょっとした褒め言葉にキュンキュンしちゃう。
朝も会ったのに、久しぶり感がある。
「ん?」
「仕事頑張った顔してるね、壮志さん」
男の人の疲れた顔が好きなんだよね、私。
ネクタイを緩め、肩を回す仕草。
「朝からクレーム2本で、客先に謝りに行ったよ」
「大変だったんだね、お疲れ様」
メニューを広げ、目を細める壮志さんを見つめていると、目が合う。
「だから、見すぎだって」
「ごめん。だって、好きなんだもん」
サラリとこんなことが言えちゃう自分にびっくりしている。
「ばか」
壮志さんは、ぶっきらぼうにそう言いながらも、嬉しそうだった。