notebook 1
それは。
その言葉は私にとって死を宣告されたのと同じくらい辛く重い言葉だった。
私は例え彼から何も与えられなくても彼に『何か』を与え続ける。
愛とか
傷とか
お金とか。
そんなものを与え続ける。
もらいたくもない愛やお金や傷を彼は私から受け取り続ける。
それは彼が死んでも私が死んでも変わらない、きっと。
短くなってきた煙草を血でまみれたカーペットに押し付けた。
この煙草の持ち主のあの女はもう二度と彼にも私にも会わない。
なぜなら彼は死んだし、私もこれから死ぬからだ。
血と灯油の染み込んだカーペットに火を落とす。
すると徐々に燃え広がっていく。
彼の肉片が炎に照らされあやしく光っていた。
あぁぁぁぁ熱い。
いや、意外と熱くないかな。
とにもかくにも私は燃えている。
彼と共に。
彼はもう『彼』ではないけれど、さっきまでは『彼』だった。
それでいい。
さっきまで彼だった『元彼』と燃える事のできる私は幸せ者だ。
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