きっともう大丈夫
「よかったね」
帰りの車の中で私たちは産まれたばかりの千沙ちゃんの話で
盛り上がっていた。
「私の名前から一字とってくれたなんて・・・・想像もしてなくって
何だか不思議な気持ち。」
「あーなんかいいな~~。俺の文字も使ってほしかったなー」
口をとがらせながら運転してるハル・・・
「じゃあー。自分の子供に自分の漢字を使えば?」
げ・・・また余計なこと言っちゃったかも・・・
するとハルは私の方をみてただにっこり笑った。
「な・・なに?」
「明日からの温泉旅行楽しみだよ」
「それ・・・子供の名前と関係ないですけど・・・・」


***********************
詩織の出産でお店が1週間お休みになったので
私たちは旅行に出かけた。
実は、どこの温泉に行くのか全く知らない。
車に乗って、高速道路を走る。
どうやら山の方へ向かっている。
「ねえ。何処行くの?場所くらい教えてよ~~温泉なんだよね?」
「うん・・・温泉って言うのは当たってるけど・・・」
「え?またよくわかんない事言わないでよー」
ハルは私の言葉など無視するかのように車を走らせた。
どのくらい走ったのだろうか・・・
立派な西洋風の門をくぐるとそこには
別荘がいたるところに建ってるのが見える。
緩やかな斜面を登ると目の前には大きなホテルがあった。
ハルは車を一旦駐車場に停めると、ちょっと待ってと言って
一人ホテルに入って行った。
しばらくすると買い物袋を提げて車に乗り込む。
「お待たせ!じゃーいこうかな・・・」
再び車を発進させた。
別荘が建ち並ぶ細い道を徐行していくと
一軒のログハウスの前に車を停めた。
「はい、到着したよ。」
「ここって・・・」
「貸別荘だよ。とりあえずこれ鍵ね。俺は荷物運ぶから
沙希は鍵を開けてよ。」
渡された鍵で開けて中に入る。
全て木で出来ている部屋はとても明るくて
天井も吹きぬけになっており横には階段もある。
「素敵・・・」
「でしょ?」振り向くと後ろにハルが立っていた。
「ご・・ごめんね。荷物全部運ばせて」
ハルはダイニングテーブルにさっき買った買い物袋を置き
カバンはソファーの横に置くとそのままソファーに寝そべった。
3時間は運転していたから疲れてるんだろうな・・・
「運転ごくろうさまでした。・・・・でも温泉って言ってなかった?」
確かにハルは温泉っていってたよね。
するとハルはむくっと起き上がり
こっちこっちとウッドデッキの方を指さした。するとそこには
なんと風呂ががあった。
「ここのお湯は、天然温泉なんだって」
得意顔で腕組をした。
「何度か来た事があるの?」
ハルは首を横に振った。
「会社の先輩から教えてもらったんだよ。ここなら
静かだしマイナスイオンも吸い放題!たまにはのんびり過ごすのも
いいでしょ?」
「ハル・・・・」
「後で散歩しようよ。夜はさっきのホテルで食事ね。その後は・・」
ハルとの距離が徐々に近づきニヤリと笑った。
な・・・何?
「その後は・・・・じゃじゃーん!」
目の前には花火のセット。
「今日は花火やるよ~~。夜の散歩もいいね~~」
ハルが楽しそうにはしゃいでる姿を見ていたら
何だか私までうれしくなってきた。
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