きっともう大丈夫
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新生活と新たな出会い

私は、ハルとの動物園デート後、店には行ってない。
オーナーから、私がいないことを知ったスタッフたちからの
質問攻めをかわすのに大変だったと落ち着いた頃に電話があった。
そして、圭吾がハルに私の辞めた理由を話したということも聞いた。
ハルとの事はいい思い出にして私は次への仕事へと向かった。

オーナーから紹介されたのは花屋だった。
花屋といっても紹介された「HANA-B」(ハナビ)は切り花を始め
ガーデニング、生活雑貨と取り扱アイテムが半端なく、
しかも小規模なホームセンター並みの大きさでスタッフの数もバイトを含め
12人という大きな花屋だった。
オーナーの順子さんとここの社長が同級生ということで順子さんが
私のために話をつけてくれたのだった。

簡単な面接ののち、来週から勤務ということになり、
私は今まで住んでいたアパートを引き払い
店に近いところで部屋を借り、新生活の準備を整えた。
ここでの仕事はhaluluとは比べ物にならなほどハードワークだった。
朝、7時半には出勤し、切り花の水かえから始まり、店内の掃除、
商品の品だし、鉢花の水やりや入荷した花の水上げ、苗の値付けと品だし、
アレンジや花束作りと目が回るほどの忙しさで帰宅は夜9時なんて
早い方だった。
でも、花好きが集まったのこの店のスタッフは
こんなハードワークでも文句1つ言わずに仕事をしている。
花の仕事が初めてということで、切り花のリーダーである鈴木明良(すずきあきら)が
私の教育係になった。
彼が私の教育係になったと知った他のスタッフは口々に「羨ましい」と言った。
私より1週間先に入社した優香ちゃん(ゆうか)の反応は露骨だった。
「沙希さん!ずるい~~。私の担当の多田さんと変ってくださいよ。」
多田さんというのは優香ちゃんの教育係で2児のパパさんだ。
大柄な体系でいつもにこにこしてる多田さんはガーデン担当。
優香ちゃんは元々「イングリッシュガーデンを作るのが夢です~」
って自分でガーデン部門を希望したんだから担当を代われと言われても困る。
「・・私は切り花担当だしね~~ははは」
「もう!本当にうらやましい。知ってます?鈴木さんってめっちゃめっちゃもてるんですよ。スタッフにも鈴木さんを狙ってるのはー私が知ってる限りで6人ですね。もちろん私もはいってますよ~。でもそれだけじゃなくってお客さんからも凄いんですよ。」
優香ちゃんがむきになって話す姿は何だかhaluluで一緒に働いていた
仲間に何だか似てて、ついついあの頃を思い出す。。
鈴木さんは確かに背が高くって、ヘアースタイルも少し長めで緩やかなパーマがかかっていて(毎朝のセットが大変そう)ちょっと釣り上った目に薄い唇。
これは確かにもてそうだ。
「おい!雪村!ちんたらやってんじゃねーぞ!花がかわいそうじゃねーか。さっさとやれー」
「はい!」
・・・私は何とも思わない。たしかにもてそうだけど口が悪すぎる。
でもお客さんにはめちゃめちゃ丁寧な接客で声優さんですか?って
言いたくなるほど甘い声。でも私には手厳しい。
観賞用にはいいかもしれないがそれ以上は勘弁してほしい。
私はそう思いながら鈴木さんの元で日々修行を始めるのだった。

この時、まさかこの人が私の人生をかき乱すことになるとは思いもしなかった。
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