きっともう大丈夫
こいつが沙希さんのモトカレ
「元って言うからには今は彼氏じゃないんですよね。」
男は煙草の吸殻を携帯灰皿に入れるとポケットにしまい込み
俺の事をじっとみた。
「君・・・高校生だよね。」
高校生だから何だってんだ?
むかつく!こいつ嫌いだ。
「高校生ですが何か?」
「沙希のこと好きなんだ」
決して馬鹿にした言い方をされた訳ではないが元彼にそんなこと言われてもうれしくもなんともない。
「好きですよ!だから好きだって告白しました。だけど・・・さっきここ辞めたってきいて・・」
男は深くため息をつくと
「悪かったな。俺がここに来なければあいつはまだここで働いていたんだろうに・・・」
え?この男のせいで彼女は辞めたってこと
「どういうことですか!!」
「俺さ、彼女と結婚するはずだったんだけど・・ま~いろいろあって別れたんだ。・・・・元々、俺がここで店を出す予定にはなってたんだ。
だけど俺、修行に出ることになったから俺が帰ってくるまでここを
彼女にお願いしたんだよ。俺じゃなくてオーナーなんだけど・・・
オーナーって言うのは俺の姉貴ね。
姉貴と沙希の間で俺が戻るまでって事で無理言ってここで働いてもらってたわけ。で、俺が帰ってきちゃったから・・・・・辞めたんだよ。」
ショックのあまり何も言えなかった。
まさか彼女が元彼の店で働いていたとは思ってもいなかった。
辞める理由がそう言った事なら誰にも本当の理由など言えるはずがない。
だから黙って辞めたんだ・・・
・・・すると店の方から
女の人が「圭ちゃーん」って呼んだ。
「ごめん俺店戻るわ」
店に戻る圭ちゃんとよばれる男が足を止めた。
「俺がこんなこと言える立場じゃないけどさ、沙希には幸せになってもらいたいんだ。沙希の事よろしく頼むよ。」
そういって店に入って行った。
きっとあいつを呼んだ女の人は奥さんだったのかもしれない。
俺は動くことができず立ち尽くしていた。
「ちっくしょー!ちっくしょー!!何で、一人で抱え込むんだよ!
俺じゃダメだったのかよ。俺が年下だから、頼りないからだまって消えたのかよ。馬鹿にしやがって!くっそー」
涙が知らず知らずのうちに流れていた。
おいおい俺泣いてるのかよ。まじかよ・・・
絶対絶対早く大人になってやる!
絶対彼女を見つけ出して俺が彼女を幸せにしてやる。
待ってろよ!沙希。

それから沙希と再会するのは9年後だった。
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