きっともう大丈夫
そんなある日
安定期に入った詩織から産休に入ったら、ここを辞めると言われた。
結婚、出産を機に店を持つと決めたようだ。
出産もあるだろうから子育てが落ち着いたら本格的に準備を進めるそうだ。
詩織の旦那さんの一海さんはフリーのイラストレーターで仕事場は自宅なので詩織のサポートもしてくれるそうだ。
ただ、詩織がここを辞めるのは正直きつい。
お店を持つための修行のためにここで働いていたから
いつかはここを辞めて独立するんだろうと思ってたが
あまりにも突然過ぎて詩織がいなくなったらという不安でいっぱいだ。
ところが詩織はそんな私の気持ちを分かっていたのか
「私の代わり、ちゃんと見つけてあるから」と言ってくれた
「代わりって?」
「昔働いていた店の後輩なんだけど、結構いい腕してるんだ。
たまたま店を辞めたばっかりだからここで働いてもらったらどうかと思って
ちょっと聞いてみたらさ、2つ返事でOKよ」
「女の子?」
なんでそんな質問をしてしまったのか自分でもよくわからない。
でも何か引っかかりを感じてしまったのは確かだった。
「そうだよ。今は・・・・25歳かな? 年齢より若く見えるけど腕はいいから
一度会ってみてよ。」
「・・・・・わかった。明良に話ししてみるよ」
詩織はその女の子の作品を携帯の画像から見せてくれたりしたが
なぜか私は素直に喜べなかった。
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