きっともう大丈夫
車に乗り込み行き先を聞くと「ナイショ」と一言だけ言うと
車を発進させた。
そう言えば初めてのデートは私が運転したっけ・・
なんだか全てが逆転したようだった。
窓から見える景色を眺め9年前の事を思い出す。
私が運転して、作ったお弁当に喜んで、動物を見て笑って・・・
自然と顔がほころんでいた。
「沙希さん・・・」
「ん?何?」
私は景色を見たまま返事をした。
「もしかして9年前のデートを思い出してた?」
「え?!」
びっくりしてハルの方を向くとハルは前を見ながら
「俺も今思い出してたから、沙希さんも思い出してたらいいなって
思って言ってみた・・・で?思い出してた?」
「・・・・思い出してた」
すると前を向いたままのハルの顔がほんのりと赤くなってるのがわかった。
「あの時は私が運転して・・・」
「沙希さんお弁当作ってきてくれて」
「マレーグマみて大笑いして」
「呼び方が店長さんから沙希さんにかわった。」
私たちは思い出を交互に語り出した。
なぜかあの時の事が鮮明に思い出せる自分に驚いた。
「お弁当を完食」
「・・・俺は沙希さんに一世一代の愛の告白をして
年齢差の事を理由に俺は振られて・・・」
「・・・・」
「沙希さんは別れ際、俺にキスして・・・」
「・・・・」
「俺の前から姿を消した・・・」
・・・・私たちの会話はそこで途切れた
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