きっともう大丈夫
詩織のマンションを出たのは10時を少しまわった頃だった。
車の前でハルが私の手をギュッと握りると
私の耳に顔を近づける。
「このまま帰したくないんだけど・・・・沙希は帰りたい?」
囁くように問いかけられる。
「そんな聞き方・・・ずるくない?」
帰りたくない・・・・だけど、それを私に言わせるの?
黙ってるとハルは肩をがっくりと落として
「あ~~残念。俺は帰したくないけど、沙希は帰りたいんだね・・・
わかったよ。送るよ」
ハルは握った手を離そうとしたが私は慌ててその手を握り返した。
「何?」
ハルはいたずらっ子の様な顔で私を見つめる。
もう!35歳の恋愛お久しぶりの私に何を言わせるのよ!
「・・・・・帰りたくない」
勇気を振り絞って言った!
すると握った手を引き寄せ抱きしめられた。
「俺が帰すとでも思った?・・・・行くよ」
耳元で艶のある声で囁かれた。
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