きっともう大丈夫
リビングに入ると、ナチュラルな雰囲気の家具やソファーがおいてあった。
「か・・かわいい」
ハルはやさしい眼差しで私の隣に立った。
「この部屋は兄夫婦が使ってる物で俺のじゃないんだけど、
沙希が好きそうな感じだと思ったんだ。」
私はリビングをぐるっと見渡した。
「本当に私好み。なんかうらやましいな~~」
心底思った。
するとハルは私の後ろに回り、後ろから私を抱きしめた。
肩に顎をのせ耳元で
「じゃあー俺と沙希の家もナチュラルな感じにする?」
その言葉だけで私の胸の上あたりがぎゅーって苦しくなって
幸せな気持ちになる。
「ハル・・・」
「もう・・・離さないよ。・・・ずっとこうして沙希を抱きしめたかったんだ。」
ハルは私の肩に顔をうずめ囁いた。
その言葉だけでハルの思いが伝わってくるようだった。
「沙希・・・」
「なに?」
「沙希のドキドキが伝わってくる。」
ハルはずっと私の肩に顔をうずめながらゆっくりと話しかけてくる。
「だって・・・こんな風に抱きしめられるなんて久しぶりだもの・・」
「・・・・聞きたくない」
「え?」
「・・・沙希の過去は、あの公園に置いてきたんだから、過去は振り返らないで
俺だけを見て。こう見えても嫉妬深いんだから。」
そういうとハルは抱きしめていた腕を離し、私を向かい合わせにして
やさしいキスをくれた。
私の頬を両手で包みこみ、触れるだけのキスから徐々に熱いものへと
変わっていく。
時々おでことおでこをくっつけては見つめ合う。
「沙希・・・大好き」
「ハル・・・私も」
そして再びキスをする。
私の口をこじ開けハルの舌が私の中に入ってくる。
それは決して荒々しいものではなく、やさしくゆっくりと堪能している様だった。
こんなやさしくて濃厚なキスは生まれて初めてだった。
私の目はそのキスの甘さでとろとろにされる。
「沙希の目、めちゃくちゃ色っぽいよ・・・」
この上なくとろけるような笑顔に私は我慢が出来す、
今度は自分からハルの口を開け中に入っていく。
一瞬驚くような顔をしたようだが、
次の瞬間、顔つきがいたずらっ子の顔に変わり
キスが次第に荒々しくなった。
「沙希がいけないんだ。・・・スイッチはいっちゃったよ」
舌を吸い上げられ、歯列をなぞられ呼吸もままならなくなる。
鼻で息をしようにもこんなに凄いキスをされたら
腰砕けになっちゃいそう。
しかし、何でこんなにキスが上手なの?
一瞬唇が離れ、再び口を塞がれそうになった私はとっさに
ハルの口を手で押さえた。
ハルはなに?って顔で驚きを隠せない。
私は手で口を抑えたまま、口を尖らせ
「何で、そんなにキスがうまいの?どれだけの女の人とキスしたの?」
文句を言った。
すると塞いでる方の手を掴まれ手を離された。
ハルはニヤリと笑うと
顔をぐっと近づけ
「それって嫉妬?」
「・・・・・・」
「沙希をとろとろの顔にさせるために練習台になった女がいるって言ったら
・・・・怒る?」
「怒る。」
何の迷いもなく私は瞬時に言い返していた。
その答えにハルはくしゃくしゃの笑顔で
私を強く抱きしめ
「冗談だよ。・・・・沙希知ってる?本当に心から愛してる人とキスすると
こんな素敵なキスができるんだよ。」
ハルのその言葉で私はエレベーター前で悩んでいたことなど
もうどうでもいいと思えた。
「ハル・・・・好きよ・・・大好き。」
「俺の方が好きだ・・・沙希・・9年分愛していい?」
「9年分愛して。」
そういって再びキスをした。
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