先生、甘い診察してください


「おっ、いらっしゃい!あやちゃん」

「いらっしゃい、あや。お帰り、智也」


医院に着いて中に入ると、お兄ちゃんと櫻田先生は待合室のソファーに座ってくつろいでいた。



「ほら。頼まれたもん買ってきたよ」

「サンキュ!本当にお前はじゃんけん弱いよなー!」

「…笑うな」


大橋先生って拗ねた時は、必ず頬を少し膨らませるよね?


その仕草が子供みたいで、なんか好き。



「あらら~。あやちゃんにも笑われてる~」

「えっ!もー、あやちゃんまで笑わないでよー!さっ、立ち話なんかしてないで、早く診察室に行くよ」


肩に腕が回された。


咄嗟にした事なんだろうけど、ドキドキがヤバイ…。





「ところであやちゃんって、さっきの……えっと、日向くん、だっけ?あの子の事好きなの?」


診察台に座るなり、急にそう聞かれたもんだからビックリした。



「な、何で…、そう思うんですか?」

「だって、付き合ってないんでしょ?だったら片思いの相手かな~なんて」


違う。


先生、思い切り誤解してる。



「違いますよ。彼は本当に…ただの、幼馴染です」

「えー、そうなの?」



私が好きなのは……大橋先生なのに。





もし、年齢がもっと近かったら。


もし、同級生だったら…簡単に“好き”って伝えられたかな?




< 48 / 497 >

この作品をシェア

pagetop