先生、甘い診察してください
「おっ、いらっしゃい!あやちゃん」
「いらっしゃい、あや。お帰り、智也」
医院に着いて中に入ると、お兄ちゃんと櫻田先生は待合室のソファーに座ってくつろいでいた。
「ほら。頼まれたもん買ってきたよ」
「サンキュ!本当にお前はじゃんけん弱いよなー!」
「…笑うな」
大橋先生って拗ねた時は、必ず頬を少し膨らませるよね?
その仕草が子供みたいで、なんか好き。
「あらら~。あやちゃんにも笑われてる~」
「えっ!もー、あやちゃんまで笑わないでよー!さっ、立ち話なんかしてないで、早く診察室に行くよ」
肩に腕が回された。
咄嗟にした事なんだろうけど、ドキドキがヤバイ…。
「ところであやちゃんって、さっきの……えっと、日向くん、だっけ?あの子の事好きなの?」
診察台に座るなり、急にそう聞かれたもんだからビックリした。
「な、何で…、そう思うんですか?」
「だって、付き合ってないんでしょ?だったら片思いの相手かな~なんて」
違う。
先生、思い切り誤解してる。
「違いますよ。彼は本当に…ただの、幼馴染です」
「えー、そうなの?」
私が好きなのは……大橋先生なのに。
もし、年齢がもっと近かったら。
もし、同級生だったら…簡単に“好き”って伝えられたかな?